要約
1 )頭・耳の後・耳の中・鼻翼の外側(鼻唇溝)などは脂漏部位とよばれ、アブラの出やすい位置であり、ここに出来る湿疹を脂漏性皮膚炎という。
2 )これは「フケ性やアブラ性が昂じてできた湿疹」であり、体質的な病気で根治する事は難しい。
3 )皮膚のアブラやフケを毎日よく洗って落とすことが予防法であり、手入れによるコントロールを基本にして必要に応じて外用薬・内服薬を上手に使用する事が望ましい。
はじめに
頭・耳の後・耳の中・鼻翼の外側(鼻唇溝)等は脂漏部位とよばれアブラの出やすい位置です。この脂漏部位にできる湿疹を脂漏性皮膚炎といいます。
原因は皮膚から分泌されたアブラに対するアレルギー反応とか、それに細菌感染や真菌感染が加わったものとか、皮脂の分泌機能異常とか言われておりますが、地肌から出たアブラが元になっていることは間違いありません。これの出来やすい人は従来から顔にアブラが浮きやすくアブラ性といわれていたり、あるいは頭の地肌からフケが出やすくフケ性といわれていた人がほとんどです。
私は患者さんに「フケ性やアブラ性が昂じてできた湿疹」と説明しています。従ってある意味では体質的な病変であり根治する事は難しい病気と言えます。つまりアブラ性もしくはフケ性という事はその人が持って生まれた皮膚の特徴であり、治療で変えられるものではありません。
症状
症状としてはアブラっぽいカサブタが地肌に付着して赤くなり痒みがでます。頭ではフケが多くなります。同じ頭や顔にできる湿疹でも普通の湿疹ではこのようなカサブタや多量のフケは見られません。また季節としては春と秋が多いとされていますがどちらかと言うと秋の方が多いように思います。但し重症の人は1年中出来ています。
治療法
治療法としてはまず外用薬を用います。頭髪部であればローションタイプ、その他の部位であればクリーム基剤(軟膏基剤は使いません。)の弱いステロイド剤、もしくは非ステロイド系外用薬を用います。そしてアブラの分泌を抑えるためにビタミンB2・B6の内服薬と、アレルギー反応と痒みを抑えるために抗アレルギー剤・抗ヒスタミン剤の内服薬も使います。細菌感染・真菌感染が重なっている場合には抗生物質の内服や抗真菌剤の外用を併用することもあります。抗真菌外用薬の中には適応症にこの脂漏性皮膚炎が追加された薬もあります。
また当院では頭部の脂漏性皮膚炎に対して紫外線照射療法を併用しております。特にジュクジュクした湿疹には効果があるようです。細菌・真菌感染が関与している可能性を考えると紫外線照射が効果があるのもうなづけます。1週間に2~3回の照射療法が効果的です。
予防法
皮膚のアブラやフケが原因ですからそれを毎日よく洗って落とすことが予防法です。治療のために薬は使わなくてはなりませんが、この予防法をおろそかにするといつまでたっても良くなりません。頭や顔は毎日きれいに洗いましょう。よくシャンプーや石鹸の種類を聞かれますが、無香料の脱脂力の強いものであれば何でもよいです。かえって「肌にやさしい。」とかいうものは地肌のアブラを落とす作用が弱くこの場合には意味がありません。また整髪料を使ってよいかという質問もよく聞かれますがアルコール系のものなら良いでしょう。油性のものはやめてください。
まとめ
脂漏性皮膚炎はアブラ性・フケ性が昂じて湿疹化したものでこのアブラ性・フケ性はその人が体質的に持って生まれた性質ですからそれを完治することは困難です。ただし予防法で挙げた洗髪・洗顔をきちんと行い、よく手入れをすればそれだけでかなり症状を軽減することができますし、人によってはほとんど薬を使わなくて良い程にコントロールできます。手入れによるコントロールを基本にして必要に応じて外用薬・内服薬を上手に使用する事をお勧めします。