刺虫症について
要約
1 )古い家ではイエダニ、ペットを飼っている場合はネコノミ・イヌノミに刺される場合がある。
2 )刺虫症とおもわれるが原因不明な場合には、新築の家では畳のダニ、他には蕁麻疹等も考えられる。
3 )毛虫皮膚炎・刺蜂症は最近増えている。
はじめに
一般に「刺虫症」と表現していますが、その虫の種類によって症状も程度も違います。また疥癬・マダニ刺咬症などもこの範疇には入りますが、それについては別の機会にお話しましょう。今回は日常よく見られるイエダニ・コナダニ・ノミ・原因虫の良く判らない刺虫症と毛虫皮膚炎・刺蜂症についてお話しましょう。
ダニ・ノミ・原因虫の不明な刺虫症
a )イエダニ
古い家屋の天井裏にネズミがいて、そのネズミに付いているダニがこれです。このダニが天井から落ちて室内に来て皮膚の柔らかい部分を刺し、点状の皮疹が出て痒みがあります。治療としてはステロイド外用剤と抗ヒスタミン剤(痒止め)の内服ですが、天井裏のネズミの駆除と天井裏・室内の掃除とダニ退治が肝要です。ただ最近は古い家が少なくなったせいか、余り見かけなくなりました。
b )コナダニ
これは空気中のホコリの中に居る小さなダニで、直接皮膚を刺すよりは、ホコリと一緒に皮膚に付着したり、気管支内に吸い込んだりして、アレルギーの原因になることで有名です。従って今回は省略しましょう。
c )ノミ
ヒトだけを刺すヒトノミは最近では見られなくなりました。代わって今問題になっているのがペットやノラネコなどに寄生するネコノミ・イヌノミです。これが主にヒトの上下肢の末端に近い部分を刺して発症します。ペットを飼っている方で両下肢のヒザから下だけに痒い点状の小紅斑や小丘疹があれば可能性があります。ヒトの治療と一緒にペットの治療と室内の掃除・ノミ退治が必要になります。
d )原因虫の不明な刺虫症
これは皮膚の柔らかい部分で上記のような症状があり、刺虫症が疑われるにも関わらず原因虫が思い当たらない場合、例えば家は新しくてネズミはいない、ペットも飼っていない、他に原因虫が想像できない場合です。ただしこのような場合でも皮膚科専門医なら考え付く原因が2つあります。 ひとつは畳です。「うちは新築で畳も新しいから畳にダニが居るはずはない。」とよく患者さんがおっしゃいます。しかしその畳の原料であるイグサはどこから持って来ているかと言うと、殆どが東南アジアからの輸入で、それも船で何ヶ月もかかって暑い中を日本に持ってくるのですからその間にダニが繁殖しても不思議ではありません。
又近年は健康上の理由と法律で強い防ダニ剤を使えないのでダニが繁殖しやすい状況になっています。畳屋さんでは防ダニ加工をしたものを取り扱ってはいますが、それで完全に殺虫できているかどうかは判りません。だから原因虫の判らない場合の原因として考え得るのです。
もうひとつ考えられる原因は虫とは関係なく、蕁麻疹の1型としての症状です。皮膚の柔らかい所に刺虫症とそっくりな皮疹が出るタイプの蕁麻疹があります。この場合には周辺皮膚を掻いてみると蕁麻疹特有の「みみずばれ」が出るのでわかります。もちろん治療は蕁麻疹の治療を行います。
続きを読む