次は治療についてです。
蕁麻疹はアレルギー性疾患ですので抗アレルギー剤の内服が中心となります。現在は抗アレルギー剤の良い薬がいろいろと出ていますので患者さん1人1人にあった内服薬を選ぶことから始まります。
これに加えて外用薬も処方しますがこれは一時抑えの薬でしかありません。蕁麻疹だけでなく慢性アレルギー性皮膚炎やアトピー性皮膚炎の治療についても言える事ですが、患者さんの中には外用薬だけを使用して抗アレルギー剤を内服しないでいる方がみえます。
これは大変な考え違いです。外用薬は「出てしまった皮疹」を治す作用はありますが「体内のアレルギーを抑えて次に皮疹が出るのを防ぐ」作用は全くありません。従って抗アレルギー剤の内服をせずに外用薬のみを使っていると永久に皮疹は出続けます。それこそ「モグラたたき」のごとくです。抗アレルギー剤の内服を続けているとだんだん体内のアレルギーがおさまって蕁麻疹でも湿疹でも出方が次第に減少してきます。
もちろんそこまで行くには何カ月も抗アレルギー剤の内服を続ける必要はありますが今の抗アレルギー剤は特に重大な副作用のない長期間内服しても安全な製品が多数出ていますので安心して内服を続けて下さい。
さて抗アレルギー剤の内服を続けて皮疹が出なくなったら次はこの抗アレルギー剤の減量に入ります。
実はこの「減量」がアレルギー性疾患の治療の中でいちばん難しいところです。というのは内服を続けて皮疹が全く出なくなったからといって急に内服を全部中止すると2~3日のうちには必ずといっていいほど皮疹が再発します。
従って抗アレルギー剤の減量は「ゆっくりと漸減する」が基本になっています。例えば最初1日2回の内服をしていたらその後の1~2週間は1日1回にして様子をみる。それでも良ければ次は2日に1回、次は4日に1回というふうに様子をみながら漸減していきます。この「漸減」の「さじかげん」が難しい所なのです。でもこれがうまく行けば何年も苦しんできた蕁麻疹が出なくなり、薬も1週間に1~2回内服するだけで良くなるのですから。もちろん皮疹は出なくなりますので外用薬はほとんど使わないですみます。
最後にケアについてですがこれは原因のところで述べた
①疲れたとき
②カゼ等をひいたとき
③季節のかわり目
④温度差が大きいとき
等がそのままケアのヒントになります。すなわちよく休んで疲れをとる・温度差の大きい所への出入りを避ける等です。
ところでカゼをひいて「カゼ薬を飲んでいるから」といって抗アレルギー剤の内服を中止してしまう人がいますがこれは間違っています。抗アレルギー剤はカゼ薬や抗生剤等と併用してもかまいませんし、前述のごとくカゼをひいた時は蕁麻疹が出やすい状態になっていますのでなおさら抗アレルギー剤を内服する必要があるのです。
最後に笑うに笑えない笑い話を1つ。
私が実際に診察した若い女性の蕁麻疹の患者さんの話です。その女性は前から「桃を食べると蕁麻疹が出る。」ことが御自分でもわかっていました。ある日友人から「すもも」をもらったその女性は、「すもも」は「桃」とは違うだろうと思い食べたところ突然蕁麻疹が出はじめ私のところへとんできました。
「スモモもモモもモモのうち・・・。」