<乳児乾燥性湿疹>
皮膚が部分的(下肢・背中など)に乾燥してカサカサして湿疹が見られるものを言います。ただ後で述べる乳児慢性アレルギー性皮膚炎やアトピー性皮膚炎(これらの中にも皮膚が乾燥して湿疹が出来る場合はあります)は除きます。従って軽度の皮膚乾燥と湿疹があるものと考えて下さい。湿疹が出来る原因は乾燥した皮膚が痒いため掻破により湿疹が出来ると考えられます。痒みを除ってやること(抗アレルギー剤・抗ヒスタミン剤内服)と乾燥を防ぐ事(ワセリン基剤の外用薬・保湿剤等)が大切です。
<乳児汗疹性湿疹>
夏場の汗をたくさんかく時期に「アセモ(汗疹)」が原因となって体中に紅い湿疹ができるものを言います。痒みが強くひどくなり易いのできちんと治療しましょう。汗が原因ですので入浴・シャワー・濡タオルでの清拭などで汗をよく落としてやり、涼しくすることが大切です。薬は抗アレルギー剤・抗ヒスタミン剤内服とクリーム基剤外用剤です。
<乳児脂漏性湿疹>
乳児、特に生まれたての赤ちゃんの頭・顔などに出来ます。脂っぽい瘡蓋が付いて湿疹となります。昔から胎毒と言われています。脂が原因ですのでシャンプー・石鹸で脂をよく落として下さい。人から「湿疹は洗ったらいけないと言われて洗わずにいたらますますひどくなった」とおっしゃるお母さん方がみえます。この脂漏性湿疹は脂が原因ですので洗って脂を落とす事が大事です。どんどん洗って下さい。また髪の毛や頭の地肌に固く分厚く固着した瘡蓋はオリーブ油等を染み込ませて柔らかくして手でほぐしながら除ってやり後でシャンプーで洗い流してください。その後で外用剤(ローションタイプ)を塗ってやって下さい。
<オムツかぶれ>
オムツ部に紅い湿疹ができます。主に尿が原因ですが紙オムツでゴムの部分、即ち腹部や大腿部に帯状に湿疹ができる場合にはゴムの圧迫によるものと考えられます。また紙オムツの材料によってもかぶれが生じる事もあります。また皮膚カンジダ症との鑑別は本HPの「オムツかぶれと皮膚カンジダ症」を参照して下さい。薬は外用剤だけで充分ですが、何よりもスキンケア、オムツを替える度に濡れたタオルでよく拭いてあげる事が大切です。
<乳児期アトピー性皮膚炎>
普通は2歳以下の赤ちゃんはアトピー性皮膚炎の診断基準を満たさない事が多く、この病名を用いる事は滅多にないのですが、アトピーと診断する場合ももちろんあります。アトピー性皮膚炎の診断と治療については本HPのアトピー座談会をご参照下さい。
<乳児慢性アレルギー性皮膚炎>
これは大人の慢性アレルギー性皮膚炎(本HPを参照)と同じ考え方で、
①かなり程度がひどく、
②長期間湿疹が広範囲に存在し、
③アレルギーの関与が考えられるものの、
④アトピー性皮膚炎の診断基準を満たさない場合
を言います。或いはアトピー性皮膚炎の一歩手前と言ってもよいでしょう。前述のごとく生後すぐから2歳ぐらいまではアトピー性皮膚炎の診断基準を満たさない事が多く、なおかつ他の湿疹と区別する必要性からこのような病名を付けています。ただ昔このような湿疹まで全部アトピー性皮膚炎と診断していた時期がありましたが、その時にアトピーと診断を受けた子供たちが成長して本来アトピーが悪くなり始めるはずの小学校低学年までに湿疹が治ってしまい問題になった事があります。従って今ではアトピー性皮膚炎の診断基準を厳密に適用して、その基準を満たさない症例についてはこのような病名を用いるのが一般的です。治療は継続的に抗アレルギー剤・抗ヒスタミン剤内服と外用薬になりますが、アトピーの治療に準じたものになります。
<乳児湿疹>
全ての乳幼児の湿疹から原因が判っているものや症状が特徴的な前記のa )~f )を除いたものがこれです(大人の場合の急性湿疹・慢性湿疹と同じです。本HPを参照して下さい)。従って原因としては何らかのアレルギーの関与は考えられるもののはっきりせず、軽度の湿疹が限局して短期間だけみられるものを言います。こう説明すると何やら判りにくいとは思いますが、一番普通に見られる赤ちゃんの湿疹と考えて下さい。治療は外用薬だけでほぼ充分ですが痒みがひどい時には抗アレルギー剤・抗ヒスタミン剤の内服を併用します。
分類と特徴をお話してましたがこれら乳幼児期の湿疹は原因も症状も程度も様々ではっきりしない時もよくあります。その中から正確に状態を把握し原因を探り、正確に診断をして上手に治療もしくはコントロールするのは難しい事です。とても1回や2回の診察では判りません。定期的に皮膚科専門医を受診して状態の変化を診せて下さい。そしてお子さんに合った治療法・予防法・スキンケアを見つけてください。