要約
1 )帯状疱疹は水疱瘡ウィルスが原因であり、水疱瘡に罹っていない人には伝染る可能性がある。
2 )神経1本分の支配領域に痛み、次いで紅斑・水疱ができる。
3 )早期診断・早期治療が大切でしっかり治療しないと後々神経痛が残る。
4 )治療は抗ウィルス剤とイオントフォレージスが有効。
帯状疱疹とは
帯状疱疹は、小児期に水疱瘡に罹った人は誰でも脊髄から出ている神経根の所に水疱瘡のウィルスが潜んでおり、それが体力の低下した時や免疫力の低下した時にそのウィルスが神経を伝わって増殖し、その神経と皮膚の炎症を起こす病気です。従って水疱瘡に罹ったことのない人は帯状疱疹にはなりません。帯状疱疹は水疱瘡のウィルスが原因ですのでまだ水疱瘡に罹っていない人には伝染る可能性があり、水疱瘡として発症します。小さなお子さんがいるご家庭では気をつけましょう。ただし既に水疱瘡に罹っている人には伝染しません。
好発部位
帯状疱疹の病変領域は脊髄から出ている神経1本分である事から体の左右どちらかのその神経の支配領域だけになります。
例えば体幹部であれば背骨の横から左右どちらかの肋間神経に沿って胸や腹に帯状に病変が拡がります。これが帯状疱疹という病名の所以です。この病気は体のどこにでもできますが好発部位としては体幹部・四肢・頭顔部があげられます。
よく患者さんが「グルっと一回りすると死ぬ」等といっておられますが、これは癌の末期やエイズなどの極端に免疫力が低下した時にこの病気になると「グルっと一回りする」=「汎発化する」ことを意味しておりこの病気で死亡する訳ではありません。それだけ免疫力が低下した元の病気、すなわち癌の末期やエイズ等によって死亡すると考えればよいと思います。
また頭顔部にできた場合には視力障害や聴力障害を伴うことがあります。これはウィルスが角膜や聴神経を冒すためにでてくる症状でこれは早期に眼科・耳鼻科の治療を併用する必要があります。
症状
初期症状は痛みです。神経1本分の領域の痛みが4~5日続き次いでその部分に発赤と水疱ができだんだんひどくなってきます。痛みもひどくなり場合によっては神経が麻痺してしまい逆に痛みを感じなくなってしまう事もあります。従ってなるべく早く神経の損傷が進まないうちに専門医の診察を受け早期に治療を始める事が大切です。
治療
昔は今のような抗ウィルス剤も今私共の診療所で行っている「イオントフォレージス」という特殊な治療法もなかったので皮疹が治っても神経痛が残ってしまい何年も「痛い・痛い」といって苦しまれる患者さんが大勢いました。私の記憶では半分くらいの患者さんに神経痛が残ってしまったと思います。この残存神経痛に対して「帯状疱疹後神経痛」というりっぱな病名まであるくらいですから、いかに神経痛が残ってしまう患者さんが多かったか理解して頂けると思います。
しかし今では事情は一変しました。昭和57年頃よりこの水疱瘡ウィルスに対する抗ウィルス剤が開発されその後も改良が加えられて良い製品が多数できてきました。それと私共が行っている「イオントフォレージス」、これは電気で薬剤をイオン化して皮膚から神経に薬剤を誘導する治療法です。元々は日大板橋病院・皮膚科で行っている治療法で、新聞などでも度々取り上げられたことがありますのでご記憶の方もあろうかとは思いますが、20年くらい前から私共の診療所でも施行しております。名古屋でこの治療法を行っているのは私共だけと見えて随分遠い所からみえる患者さんもみえます。いずれにせよこの「イオントフォレージス」と抗ウィルス剤の併用療法でここ10年くらいは私共の診療所では神経痛の残る患者さんはいなくなりました。
経過
いかに早く発見しいかに早く治療を始めるかにもよりますが、平均約1ヶ月と考えればよいでしょう。もちろん早く治療を開始できれば2~3週間で完治する患者さんもみえます。逆にご老人で麻痺するまで治療をしなかった方は6ヶ月~1年かかる場合もあります。ポイントはやはり早期発見・早期治療に尽きます。不審な痛みが2~3日続いたら皮膚科専門医の診察を受けましょう。