はっきり申しますが「薬を全く使用しない状態で長期間・半永久的に症状が出ないようにする事」を「完治」と定義するならば、これは「完治できない」と言わざるを得ません。
しかし症状が出ないように抗ア剤を用いてアレルギーを上手にコントロールする事は可能です。現在の全てのアレルギー性疾患に共通した治療の基本コンセプトは、「抗ア剤の内服と生活環境の改善により上手にアレルギーをコントロールすること」です。
ですから「完治」を目標にして無理やり治療してもうまく行きません。必要最小限の抗ア剤内服を原因療法の基本として、生活環境の改善や抗ア剤以外の薬を症状に応じて併用して上手にアレルギーをコントロールする事、アレルギーと上手に付き合う事が大切です。
抗ア剤は現在では沢山の種類があります。昔は他の薬と併用すると副作用の出るタイプもありましたが現在では他薬と併用できない薬は殆どありません。「20年くらい重大な副作用報告が出ていない安全で信頼できる薬」も多数あります。唯一副作用と言えるのは「眠くなるかも知れない」という事だけです。私達はまず眠気の一番少ない、かつ重大な副作用報告のない抗ア剤を選んで使用しております。
余談になりますが「20年くらい重大な副作用報告がない。」と言うことがいかに大切な事かよく考えてみてください。今までに「安全な新薬」として発売され、数年と経たない内に死亡事故等を起こしてどれだけの薬が消えて行った事か。これを考えると「20年間重大な副作用報告がない」という薬は貴重な存在だと言えます。私達はこれらの安全な抗ア剤を厳選して治療の基本とし、それに対症療法としての抗ヒ剤や外用剤を併用して治療しています。それでは実際の診療に即してお話しましょう。
皮膚科領域のアレルギー疾患は様々ですがアレルギーのコントロールという点では皆一緒です。初診時にアレルギー性皮膚疾患と診断した場合問診をしたり検査をしてアレルギーの有無・程度・直接悪くなった原因は何かを考えたりするのは当然(除去できる原因が判ればそれを除去するのも治療の一部です)ですが、アレルギーの程度に応じて抗ア剤を原因療法とし、抗ヒ剤や外用薬を対症療法として処方します。症状がひどい場合には複数の抗ア剤や場合によっては副腎皮質ホルモン剤の内服も短期間必要な場合もあります。
又痒みのひどい場合には注射が必要な場合もあります。2回目の受診時に症状が改善していれば暫く(少くとも2~3週間、症状が出なくなるまで)は同じ治療を続けます。この時症状が改善してない、あるいはひどくなっていれば他の抗ア剤との併用あるいは変更をします。注射(抗ア剤や体質改善剤)等もします。何はともあれ現在の症状を緩和する事が大事です。
さてアレルギーが治まって症状が出なくなったらどうするかというと実はここからが本当のアレルギーのコントロールになります。
薬を色々使って症状が出なくなるのはただ薬で抑えているからでありアレルギーが無くなった訳ではありません。もしこの時点で「治った」と言って全ての治療を中止したらすぐに再発する事は目に見えています。
実際今までにたくさんの患者さんが途中でご自分の判断で治療を中止してしまい、数日後~1ヶ月位の間に再発しもう一度最初から治療のやり直しをしておられます。この時点で対症療法の抗ヒ剤や外用薬を中止するのは構いませんが、原因療法である抗ア剤だけは続けてください。この抗ア剤を状態に応じて減量したり、またひどくなってきたら増量したりするのがアレルギーのコントロールです。
状態が良ければ長期間かけて抗ア剤を暫減し、例えば1日1錠の内服を2日に1錠にして1~2週間様子を見る。良ければ次に3日に1錠にしてをみる。次は4日に1錠、1週間に1錠という減らし方です。ただ不思議な事にそれ以上間隔を空けると症状が出る訳ではありませんが、皆さん「何かしらムズムズする。」、「少し痒い様な気がする。」とおっしゃいます。
従って1週間に1~2回は内服を続ける事がベストコントロールだと思います。 もちろん人間は生活している間に色々な事があり、仕事で疲れたり、ストレスがあったり、風邪をひいたり、他の病気になる事もあります。そうするとそれまで巧くコントロール出来ていたアレルギーが急にひどくなります。
そういう時には一時的にせよ抗ア剤を増量せざるを得ません。でも今まで巧くコントロール出来ていた人はごく短期間の増量だけで済む場合が多いようです。それよりもご自分のアレルギーが悪くなる原因を良く把握しておいて、そのような事態になったらアレルギーが悪くなる前に抗ア剤の増量(例えばそれまで1週間に1錠だったのを風邪をひいたら暫く毎日内服するとか)をすればアレルギーを巧くコントロールして症状が出るのを未然に防げます。アレルギーが悪くなる原因としては体調の悪い時、疲れた時、風邪などをひいた時、季節の変わり目(春・秋の日中と夜間の温度差が大きい時)等です。
ご自分でアレルギーが悪くなる予兆をしっかり把握して未然に抗ア剤を増減するようにしましょう。